限りあるリフォーム予算の中で優先順位を決めるのはひと苦労です。中にはコストダウンをすることで、先々の暮らしが不便になったり、却って維持費用がかさんで損をしてしまったりすることも。今回は、リフォームでコストダウンをすると後悔をしやすい箇所をご紹介しましょう。
リフォームで予算オーバー!コストダウンで後悔も
リフォームの見積もりを取ってみたら、予算よりも大幅にオーバーしてしまったというケースは多いもの。限りある予算の中で満足のいくリフォームにするためには、しっかりと優先順位を付けて計画を立てる必要があります。
リフォーム費用のコストダウンの方法には、リフォームする箇所を絞る、設備や建材のグレードを落とすなどがありますが、コストダウンにはリスクが伴うもの。
コストダウンをしたことが原因でストレスが溜まったり、快適に暮らせなかったり、中には後になって費用がかさんで却って高くついてしまったケースもあります。
今回は、筆者がリフォームの現場で見た、コストダウンをすると後悔しやすい3つの箇所をご紹介します。
家事の手間に影響を与える箇所はストレスが溜まる
リフォームのコストダウンで後悔をしやすい箇所の1つめは、家事の手間にかかわるものです。
例えば、キッチンならグリル、引き出しのつくり、カウンターやシンクの品質など、高機能なものはその分費用が高くなりますが、家事を格段にラクにしてくれます。
このような家事の手間に直結する箇所のコストダウンは、生活への影響が大きく、実際に使い始めてから「やっぱり費用を掛けておけばよかった」と後悔することが少なくありません。
中には、グリルのコストダウンをしたせいで掃除や後片付けに手間が掛かり使っていない、引き出しの中の整理整頓がしにくいので片付かない、カウンターやシンクの美観を保つのに手間が掛かりストレスを感じているという声も。
暮らしの利便性や快適性が向上してこそ、リフォームをする甲斐があるというものです。特に自分が苦手だと感じている家事は、設備の力を借りることで、気持ちも手間もぐんとラクになります。
他にも、掃除がしやすく美しさを保ちやすい床材や、洗濯がラクになる乾燥のための設備の導入など、家事に関する機能面でのコストダウンはできるだけ避け、優先順位を上げておくと、「やっぱりやってよかった!」と、リフォームの満足を日々実感できるようになります。
日々の快適性を支える断熱性能は健康にも影響を及ぼす
【リフォーム前】
【リフォーム後】
リフォームのコストダウンで後悔をしやすい箇所の2つめは、室内の環境にかかわるものです。
築年数が経った家は概して断熱性能が低く、外気の影響を受けやすいため、冬は寒く、夏は暑い状態にあります。そこで家の断熱性能や気密性能を上げるリフォームを行うことで、小さなエネルギーで家の中の快適さを維持できるようになり、光熱費の削減にもなります。
しかしこのような住宅の性能は、実際に住んで初めて分かることも多く、また目に見えにくいため、コストダウンの対象になりやすい面があります。
結局、住み始めてからその必要性を実感することになり、「やっぱりやっておけばよかった」と後悔することが少なくないのです。
中には、せっかく床暖房の設置リフォームをしたのに、断熱の弱点となる窓の性能向上を行わなかったせいで、いくら暖房しても熱が流出してしまうので家の中は寒いまま。結局、光熱費が高くついてしまい、次の冬にはほとんど使わなくなったケースもあります。
断熱性能の向上リフォームは、見た目はそれほど変わらなくても、家の中の快適性は格段に向上します。中でも窓のリフォームは手軽で、内窓の取り付けなら1か所1~2時間程度、最近では外壁の補修無しで交換ができる高性能の樹脂サッシもあります。
国交省の調査(※)によると、冬に室温18度以下の家に住んでいると、血圧やコレステロールをはじめ様々な疾病・症状がある人が優位に多く、冬に寒い家は健康に悪影響があるとしています。
特に寒さが苦手という方は断熱性能に関するコストダウンはできるだけ避け、優先順位を上げておくと、この先を快適に健康的に暮らせるようになります。
(※断熱改修等による居住者の健康への影響調査)
メンテナンスの手間や費用が大きな部位は後から損をすることも
リフォームのコストダウンで後悔をしやすい箇所の3つめは、メンテナンスに関するものです。中でも外壁は、後の出費に大きな差が生まれやすいため注意が必要です。
外壁は面積が大きく、また多くの場合足場が必要になるため、リフォームの中でも費用ボリュームが大きいのが特徴です。
つまり選ぶ外壁材や工事方法によってコストダウンをしやすい部位でもあるということ。しかし今安く済んでも、先々に頻繁にメンテナンスが必要になれば、長い目で見れば却って出費が多くなります。
また美観の維持がしやすいかを見極めることも大事なポイントです。短期間で汚れが目立つ外壁材を選んでしまうと、わが家を見るたびに残念な気持ちになってしまいます。
外壁リフォームでのコストダウンの際には、先々のメンテナンス性と美観の維持方法をしっかり吟味して検討をしましょう。
例えばこちらの写真は、外壁に樹脂製のゼオンサイディング®を使用した住宅の事例です。樹脂サイディングは高耐久で凍害にも強いので、北米ではスタンダードな外壁材です。日本でも北海道を中心に広まっています。
樹脂サイディングの特徴は、顔料が練りこんであるのでほとんど色あせをせず再塗装が不要。汚れたら水洗いでキレイになります。またシーリングも使わない工事方法のため、打ち替えの手間もありません。リフォームの際は、今ある外壁の上から張るカバー工法で張ることができます。
メンテナンスにコストが掛かる箇所は、目先の金額だけでコストダウン計画を立てるのではなく、先々のことをよく考えて計画を立てることが、本当に得をするリフォームになります。
限りある予算の中で満足度の高いリフォームをするためには、コストダウンの優先順位をしっかりと検討することが大切です。わが家にとって必要な要素を見極めて、後悔の無いリフォームをしてくださいね。