外壁リフォームにはさまざまな方法がありますが、全国的に広まっているのが「重ね張り」や「カバー工法」と言われる、既存の外壁にサイディングを重ねて張る方法です。
とくに「金属サイディング」によるカバー工法は増えており、住宅街を歩いているとよく見かけることがあります。
カバー工法は一見よさそうな方法ですが気を付けなければならない点があります。この記事ではサイディングのカバー工法に焦点をあて、気をつけたいポイントとカバー工法に適したサイディングを解説します。
住宅のリフォームをする際、比較的大きな費用になるのは「外壁」ですが、リフォームする時点での劣化状態や外壁の種類により、リフォームの方法は異なります。
ここではサイディングの種類ごとに、外壁リフォームの方法についてお伝えします。
窯業系サイディングを張るリフォーム

現在のサイディングが窯業系の場合、再塗装が費用的には安く済みます。ところが塗装したとしても、およそ10年後にはまた塗装が必要になる場合があるため、サイディングの張り替えを選択するケースもあります。
また、サイディング表面が劣化している場合は、塗装では以前のキレイな外壁面の再現ができない可能性が高く、張り替えが必要になるというケースも多いと言えるでしょう。
サイディングの張り替えは、既存の窯業系サイディングを剥がし、新たに窯業系サイディングを張りますが、大量の廃棄物がでるという難点があります。また既存のサイディングがある程度年数を経ている場合には、基材にアスベストを使用しているケースもあり、解体工事費用が高くなる可能性があります。
そこで、既存のサイディングの上に重ねてサイディングを張る「カバー工法」をすすめられる場合もありますが、窯業系サイディングの重ね張りは外壁重量が増加し、構造上の安全性に問題が生じる懸念も生まれます。
このように窯業系サイディングは、張り替えの場合は費用面が、重ね張りの場合は構造上の問題があり、慎重に検討する必要がでてきます。
さらに窯業系サイディングは水分や湿気に弱いという特性があり、台風の多い地域や寒冷地などでは外壁表面が傷みやすく、張り替えをしても10年ほどでメンテナンスのリフォームが必要になることもあります。
金属系サイディングを張るリフォーム
窯業系サイディングは劣化がすすみやすく、リフォームするなら耐久性の高いサイディングを重ね張りする「カバー工法」が非常に多くなっています。
金属系サイディングは、カバー工法に適したサイディング材料として評価されています。重量が軽いため施工性がよく、さらに耐久性も高いため、多くのリフォーム工事店
が扱っており、サイディングメーカーも普及に力を入れている商品です。
ところが、金属製の素材とくに鋼板製はサビが心配であるということがあり、潮風があたる海岸近くでの使用は慎重に検討する必要があります。また潮風に強いとされるアルミ製のサイディングは、取り付けの際に鉄製の釘や金物を使用していると、電蝕という現象により釘や金物が腐食することがあります。
金属製サイディングは地域の特性を考慮して、素材を選択する必要があるでしょう。
樹脂サイディング(ゼオンサイディング®)を張るリフォーム

カバー工法を採用する際には、樹脂サイディング(ゼオンサイディング®)を選択するのも非常によい方法です。樹脂サイディングとは、北米で主に使われているサイディング建材で、非常に軽く、耐候性も高く、新築住宅はもちろんですが、リフォームにもたいへん適した製品です。
窯業系や金属系サイディングでは継ぎ目などにシーリングを施工しますが、シーリングの耐久性は10年ほどと言われ、外壁のメンテナンスでは課題となっています。
樹脂サイディング(ゼオンサイディング®)はシーリングを施工しなくても、水密性を確保できる「オープンジョイント工法」となっていますので、メンテナンスの負担も少ないという特徴があります。
劣化しやすい窯業系や、錆などへの注意が必要な金属系に比較し、軽量で耐候性が高く、次章で説明する「通気性」が期待できるサイディングであり、カバー工法には最適な素材と言えるでしょう。
外壁の通気層とは何か?

外壁リフォームを検討していると「通気層」という言葉を目にする機会が多くなります。
最近のほとんどの住宅は、外装材の裏側に外気が通り抜ける「通気層」を設ける施工方法となっています。通気層には次のような2つの役割があります。
- 室内側から外壁の裏側に放湿された湿気を外部に放出する
- 雨などの外部から外装材の裏側に浸入した水分を外部に排出する
木造住宅は湿気を嫌います。木材は水分を多く含んでしまうと腐れが生じ、構造体としての役割を失ってしまうからです。
木造住宅で用いる構造部材の含水率は20%以下とJAS規格で定めていますが、一般には15~18%の範囲の構造部材が望ましいとされています(出典:全国木材検査・研究協会)。日本の大部分は温暖で湿潤な気候であり、夏から秋にかけてはたいへん湿度の高い環境となっています。そのため、湿気の多い時期には構造部材の含水率は高くなる傾向となります。
また寒冷地では外部と室内との気温差が大きく、暖房により気温が高くなった室内で湿気が多くなると、壁面や窓ガラス面に「結露」が発生します。現代の住宅は断熱性が高く室内の湿気が多い場合には、壁内部で結露が発生することもあります。
このようにして発生する結露により、水分が構造体の木材に浸透すると含水率が上昇し、構造体の耐久性にも大きな問題となるのです。そのため、木造住宅にとって大敵とも言える「湿気」を、外部に放出する大切な役割を担っているのが「通気層」です。
カバー工法で断熱性は高くならない

外装材には裏側に「通気層」があり重要な役割を担っていると説明いたしました。
通気層は外壁の土台付近から外気を取り入れ、上昇気流により屋根裏や壁の上部の通気口から、再び外部に放出するようになっています。
つまり、外装材の裏側は外気と同じ空気が流れていることになります。
カバー工法で金属製サイディングを重ね張りすると、サイディング本体に断熱材が貼ってあるため『断熱効果により暖かい家になると』いった広告を目にしたことはありませんか?
しかし、外装材の裏側は外気と同じ空気が流れる通気層があるため、実は断熱効果はほとんどないのが現実です。
また、最近「外断熱(外張り断熱)」という言葉を聞くことが多くなったと思います。金属製サイディングの重ね張りは「外側に断熱材」を張る状態になるので、外断熱とおなじと考えるのも誤解であり、外断熱のしくみはサイディングのカバー工法とは異なるものです。
外断熱の住宅とは住宅全体を断熱材で包んだ住宅であり、通気層のある外壁の外側に重ね張りをしても、断熱性能を向上させる効果はありません。
間違ったカバー工法により耐久性は低下する
外装材裏側の通気層については、通気のしくみが理解されずに施工されているケースがあります。
よくある間違いとしては、軒天井があるタイプの住宅の場合、通気層を形成する胴縁材は軒天井を張る前に取り付けるのですが、軒天井を張ってから取り付ける場合があり、そのような施工方法では通気層が軒天井により遮断されます。
このような状態の外壁の上に金属サイディングを重ね張りすると、既存外壁の通気層が機能しないうえに、外壁表面からの放湿作用も失われるので、湿気がこもりやすい外壁になってしまいます。
また重ね張りする金属サイディングそのものにも通気層を設けることが必要ですが、前
述したように軒天井はすでに張られているので、通気層が軒天井により遮断される状態となります。
外壁の重ね張りでは、壁上部から必ず空気が抜ける仕組みをつくらなければなりません。
通気性の低下した外壁により、外壁はもちろん木造の構造部分も含水率が上昇し劣化を招くことになります。そのため構造上の耐久性が低下し、寿命の短い住宅となってしまいます。
外壁リフォームに適したサイディングとは




外壁リフォームを「重ね張り」で行うときには、とくに通気性を確保できる方法で行うことが鉄則です。
窯業系サイディングの場合は、通気層による水分の放湿効果に加え、サイディング表面からの放湿効果も維持しなければなりません。重ね張りにより既存サイディングを密閉してしまう方法は避けなければなりません。
つまり、重ね張りに適したサイディングは、次にあげるような性能が維持できる材質や施工方法であることが望ましいです。
- 外壁荷重の増加をできるだけ防ぐことができる軽量な素材
- リフォームのサイクルが少ない耐候性の高い素材
- シーリングなしでサイディングの継目の雨仕舞ができる形状と施工方法
このような特徴をもつサイディングとして活用できるのが、樹脂サイディング(ゼオンサイディング®)なのです。
樹脂サイディング(ゼオンサイディング®)は北米を中心に外壁材として高い評価を得ており、日本においては、輸入住宅の普及により知られようになりました。
新築時の外壁材料としても注目ですが、外壁リフォームの素材としても「重ね張り」に必要な性能を有しており、たいへん優れたサイディングと言えるのです。